能登半島地震は南海トラフ地震の「縮図」 香川で備えることは
- 2024年03月11日
「南海トラフで想定される被害が集約されて起きた」。能登半島地震を専門家はこう表現します。家屋の倒壊や津波、燃え広がった火災、液状化、集落の孤立化・・・。発生から2か月が過ぎて私たちは香川県でどういうことに備えるべきなのでしょうか。
南海トラフ地震 香川では「地盤沈下」に注意
地震や津波が専門の香川大学の金田義行特任教授は、能登半島地震は将来高い確率で発生するとされる南海トラフ地震の、いわば「縮図」とも言えると指摘。揺れと津波、火災や液状化、交通網の断絶が、四国でも起こると話します。
金田特任教授
「南海トラフで想定している被害のいろいろな要素が集中してしまいました」
一方で、能登半島とは全く逆になる現象もあります。地震による地盤の変化です。
能登半島地震では、沿岸部で最大で4メートルほどの隆起が発生。海の底が陸地になり、港が使えなくなりました。金田特任教授は香川県では反対に、地盤が大きく沈み込むと言います。
金田特任教授
「1946年の昭和南海地震の時でも40センチから50センチメートルの地盤沈下が報告されているので、それくらいあるいはそれ以上の規模を想定して対応することが大事です」
なぜ香川県の地盤が沈み込むのか。メカニズムを教えてくれました。南海トラフでは、海側のプレートが、陸側のプレートを引きずり込みながら沈み込んでいます。
地震は、陸側のプレートが耐えきれなくなって跳ね上がるときに起こります。このとき、陸側のプレートは、餅が引き伸ばされたような状態になると言います。
餅が引き伸ばされた際に真ん中がたるみますが、香川県など四国の大部分はこのたるむ部分にあたると言います。このようなメカニズムで香川県では地盤が沈下するということです。そして地盤が沈むことで、沿岸部では津波よりも先に浸水が発生する可能性があると金田特任教授は指摘します。
金田特任教授
「0メートル地帯の標高がさらにマイナスになるわけですね。津波が来る前にゆとりがあるのではなくてその前に海水が入ってくるリスクもあるので、できるだけ早く避難することが非常に大事なことだと思います」
的確な避難につなげる観測網「DONET」とは?
より早い避難を促し減災につなげるため、金田特任教授が長年、取り組んできたのが、地震や津波の観測網の整備です。見せてもらったのは沖合で観測された揺れの波形です。
先月26日に愛媛県や広島県で最大震度4を観測した地震の揺れが記録されていました。この波形は「DONET」と呼ばれる観測網から得られたものです。
四国や紀伊半島の沖合に51の観測点が設置されていて、揺れや水圧などの変化を観測し、リアルタイムでデータが送信されます。
観測した情報は気象庁に共有され、緊急地震速報や津波警報などに活用されています。
金田特任教授
「体で例えると聴診器を体に複数個同時に当てていて、皆さんの健康状態をモニタリングしているようなもので、地震に置き換えれば地震の状況をモニタリングしています。もしどんどん南海トラフ地震が起こるリスクが高くなると、地震活動がおそらく変わってくると思いますが、そういうものをきちんと捉えることを目的としています」
さらに地震が発生した際には、沖合で観測した情報を基に、津波の浸水範囲を随時シミュレーション。結果は地図上に表示されます。
坂出市では、平成29年から防災訓練に活用しています。津波の到達時間や浸水エリアの予測を、救助活動にあたる職員の安全確保に生かすことができるのではないかと考えています。和歌山県などでは、すでに導入されているこのシステム。金田特任教授は、活用が広がれば、より的確な避難につながると期待しています。
金田特任教授
「DONETの情報を見ながら『ここまでは浸水する』と『あとこのくらいの時間だったら津波が来るんだ』と分かります。1時間もし猶予があるとすれば取り残された方やけがをされた方を救援、救助できます」
降水確率70%だったら傘を持つ?持たない?
南海トラフ地震が発生する確率は30年以内に70%から80%とされています。金田特任教授は今できる備えとして住宅の耐震化や避難経路の確認などが大切だとしたうえで、備えることの大切さをこんな例えで教えてくれました。
金田特任教授
「降水確率に置き換えて70%80%と言われれば、皆さん傘を持ちますよね。ですから今備えが必要なんです。日ごろの備え、普通に考えてやるべきことをきちんとやっておけば命を守ることができる」
また、金田特任教授は「30年以内というと30年後だと思ってしまうかもしれないが、今日や明日起きるかも知れないと考えてほしい」とも話していました。能登半島地震を遠い場所のことだとは思わずに香川県でも今から地震への備えを行うことが大切です。