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日本一小さい県で「コンパクトな街」を 高松市拠点整備の現状

  • 2023年08月16日

 

コンパクト・プラス・ネットワーク

G7都市相会合が7月高松市で開かれました。議論された内容の1つが高松市でも進められている「コンパクト・プラス・ネットワーク」。市内での現状を取材しました。
 

「コンパクト・プラス・ネットワーク」は高松市が進めているまちづくりの政策です。 

行政機関や医療機関などを集約して徒歩で暮らすことができる拠点を市内に複数設けます。商店街やサンポートを含む大きな拠点とともに、ことでん=高松琴平電気鉄道やJRの路線に沿って太田や仏生山、香西などに拠点が設定されています。そして拠点と拠点を、鉄道やバスといった公共交通機関を利用することで行き来することができ、マイカーを持たなくても生活できるようにします。 

進む施設の集約

その拠点の1つ、高松市の仏生山町です。 人口はおよそ8400人。 この5年間で5%近く増えました。

高松市立みんなの病院

5年前には市の総合病院ができました。25の診療科目が設けられていて大規模災害時の拠点病院となっています。そして去年、この病院の近くに市役所の出先機関が入った施設がオープンしています。

高松市仏生山交流センター内

行政手続きのほかに趣味の講座なども開催されています。この地区では現在、ことでんの鉄道の駅を中心に、都市の機能を集約する事業が進められています。

ことでん仏生山駅周辺
市民

私が車を運転できないので、歩ける範囲で大きい施設があるというのはすごく便利。

市民

この間、健康教室があってお手伝いもしたし、いろいろと活用してますね。

 

進むマンション建設 奥は4年前にできたマンション

ことでんの駅前では、民間の事業者によるマンションの建設も進んでいます。4年前にできたマンションについては、およそ5か月で完売するほどの人気ぶりでした。 

市が所有する未利用地(奥は公園)

駅の周辺には、市が所有する土地がまだ残っています。市は高齢者や子育て関連の施設の建設も念頭においています。 

市の担当者

子育て支援施設や高齢者施設といったところが充実してくることによって住みやすい街として仏生山が整備されればと考えております。

「ハコ」はできても・・・

武下重美さん 

駅の近くで60年ほど続く洋品店を営み、仏生山商工振興会の会長を務める武下重美さん。新たな施設が次々に整備されることを好意的に受け止めています。

武下重美さん

安心な街になったんじゃないかな。買い物は近いし、病院は近いし、駅も近い 。これで仏生山の中核としての都市機能ができたんじゃないかなと考えております。

 

仏生山駅から東側の商店街

一方、駅の近くの昔ながらの商店街。 こちらも急激に活性化・・・ というわけにはいかないようです。 高松松平家の菩提寺である法然寺の門前町として、江戸時代から栄えてきましたが、現在は空き店舗が増えるなど衰退傾向にあります。郊外の大型商業施設への買い物客が増えていることもあり、都市機能が集約化されてもメリットをあまり受けていないということです。 

高松市が作成した人口増減の推計

市が作成した2010年から2050年の人口増減の推計です。ことでん太田駅周辺では赤い部分が多く人口の増加が予想されていますが、仏生山駅周辺を含む青い部分は、人口が減ると予想されています。多くの人に長く住んでもらうためには、商店街も含めて魅力ある街にしていくことが鍵となります。こうしたなか、仏生山の商店街では若手経営者が古い店舗をリニューアルして飲食店や衣料品店などを新たにオープンさせるなど、活性化にむけた動きも見られているということです。 

武下さん

若い経営者と古い店の店主をつなげる取り組みをやっている最中で、お互いに切磋琢磨して仏生山の商店街を盛り上げていってもらいたいなと思っています。

キーワードは「歩いて回る」

香川大学 西成典久 教授(右)

拠点作りはどのように進めるべきか。都市計画や街づくりに詳しい香川大学の西成典久教授は、施設の整備だけではなく、拠点として魅力ある地域にすることが大切だと強調しています。

香川大学 西成典久 教授

交流拠点を作るイコール「交流センターなどの箱物を作っておしまい」というのが、 一番やっちゃいけないことと思うんです。そうじゃなくて同じ予算かけるのであれば 、その街に一体どういうものが魅力としてあって、そこでどういう人々で話し合いを続けていけば課題解決ができていくのか。そこに知恵と人を投入していく必要がある。

そのうえで商店街だけではなく、行政や専門家を巻き込んだまちづくりが必要だということです。 

西成教授

道路とか公共空間、駅周辺も含めて一体的にどんなふうに変えていくと魅力が増していくか、そこに人々が滞留できるか、そういうような議論を進める会議体を官民連携で作っていく必要があると思います。

具体的にはどうすればいいのか。西成教授は仏生山の商店街は訪れるにも車が混み合い、訪れた人が歩きにくくなっている点を指摘。

仏生山町内の交差点

店などを巡ることができるように、一部で車を入れないようにしたうえで人々が滞留できるようにして歩いて楽しめるエリアを作ることが重要ではないかとしています。

拠点整備をどう進めるか

行政機関や医療施設、商業施設を作るだけではなく、人が長く住み続けるためにどう魅力を作っていくかを考えていく必要があります。今回は仏生山のまちづくりを中心に取材しましたが、高松市内では仏生山以外にも複数の拠点が設定されています。それぞれの拠点整備がどう進んでいくか。今後も注目していきたいと思います。
 

  • 内野匡

    高松放送局記者

    内野匡

    平成31年入局。高松市政などを取材。

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