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高松港が「特定利用港湾」 に指定 香川はどうなる?

  • 2024年04月08日

4月1日、防衛力の強化に向けて政府は自衛隊や海上保安庁が訓練などで円滑に使えるように整備・拡充する「特定利用空港・港湾」に、全国のあわせて16の空港と港を指定することを決めました。この中に含まれていたのは高松港。観光や交通の要所ですがこれからどうなっていくのでしょうか。(高松局・内野匡)

特定利用空港・港湾とは?

そもそも「特定利用空港・港湾」とは有事に備えて、平時にも空港や港を自衛隊や海上保安庁が円滑に利用できるようにする取り組みです。

空港や港の管理者である自治体が、国などの関係機関と連絡や調整のための体制を作って、事前から利用について協議をしておくことで円滑な利用を目指しています。また、特定利用空港・港湾の指定にともなって必要な施設整備も行うことが決まっています。新しい法律を定めるものではなく、従来の港湾法などに基づいて運用されます。

ではなぜ政府はこのようなことを進めているのでしょうか。これは国の防衛政策に深く関わっています。

政府は、一昨年、外交・防衛の基本方針である新たな「国家安全保障戦略」を定めました。この中では、民間の空港や港について利用や整備を拡充する方針が示されています。つまり、平時にも空港や港で訓練を行い、その施設を整備して、防衛力を強化するということです。

 

今回指定された高松港

なぜ高松港が特定利用港湾?

今回特定利用空港・港湾に指定されたのは、米軍基地がある沖縄や九州などの16か所の空港や港で、四国では高松港以外に、高知県の高知港や須崎港、宿毛湾港が指定されました。
 

 

このうち高松港が指定された理由について国は、「自衛隊の部隊が近くにあるから」と説明しています。これは善通寺市に司令部や多くの部隊がある陸上自衛隊の第14旅団を指しています。国は、高松港で第14旅団と連動した訓練も想定されるとしています。

防衛と香川県。安全保障に詳しい東京工業大学の川名晋史教授は、いわゆる「台湾有事」の際に、高松港が避難する人々の輸送拠点になる可能性を指摘しています。

 

東京工業大学 川名晋史 教授

東京工業大学 川名晋史 教授
「具体的には台湾有事の際に人々を南西諸島から逃がす場合に、まず九州の港というのが候補になってくるわけですけれども、そうした港が使用不能になるような事態、あるいは近隣であれば広島県の呉の港が満杯になった際の避難先として高松港も整備が必要だと考えられているのではないかと思います。あくまでも、バックアップ、保険のようなものだというふうに考えてよろしいと思います」。

香川県「災害時にメリット」

今回の特定利用港湾の指定の受け入れには高松港の管理者、今回は県の同意が必要です。どういう理由で県は認めたのでしょうか。池田知事は記者会見で次のように述べています。

 

池田知事

池田知事
「高松港に自衛隊、海上保安庁の関係船などが着岸することを事前から想定した準備をしておこうということになりますので、大規模災害起きた際に迅速に高松港からの支援物資の搬入ができるようになるのが大きいメリットの1つ。国家安全保障の意味でも重要だという位置づけのなかで今回の国の取り組みですので、港の岸壁整備について促進をする方針もあわせて示されているので港湾整備のスピードアップも期待している」。

池田知事は国の安全保障体制の強化の一助になることや、大規模災害発生時に自衛隊などの活動が迅速に行われることなどを期待しています。また、国が進めている高松市朝日町にある港湾の岸壁整備も前倒しされることになり、より港の整備が進むこともメリットになるとしています。

専門家「有事を見据えた取り組み」

今後、高松港は、自衛隊や海上保安庁の訓練などの利用が増えることが予想されます。
県によりますと、国からの説明では自衛隊の護衛艦の接岸や輸送艦への物資の積み降ろしなどの訓練が年に数回行われるということです。また、災害発生時や弾道ミサイルの破壊措置の対応時などの緊急時に利用されることもあるということです。

 

一方で、市民団体などからは有事の際に危険が及ぶとして高松港を対象から外すよう、県に要望が出されるなど懸念の声があります。池田知事はあくまで平時での自衛隊などの利用に関する取り組みだと強調していて、指定によって攻撃対象になるリスクが大きくなるとは考えていないと話しています。
しかし、川名教授は「特定利用空港・港湾」は有事の際の利用を見据えた取り組みだと指摘します。

 

東京工業大学 川名晋史 教授

川名教授
「もちろんこれは有事の際の利用というものも想定されているわけですから、そうした事態が生じた場合には攻撃のリスクがゼロではないということは、やはり考えておかなければいけないと思います。とはいえ、そのリスクは例えば他の米軍基地を受け入れている自治体であるとか、より大規模な海上自衛隊の施設に比べれば現時点では高いとはいえない」。

専門家は、リスクはゼロではないと指摘しています。今後、県は国などと作る連絡や調整の体制のなかで、自衛隊などが高松港を使用する際には事前に協議を行い、民間利用などに影響が及ばないように運用するとしています。
池田知事は4月の会見で「民間の利用が犠牲にならずに運用されるという実績を示すことが理解を得られる一番重要なことだ」と述べ、訓練に関する事前の情報公開をできるだけ行う考えを示しています。高松港では今後、自衛隊などの訓練が増えていくことが予想されますが、高松港がどのように利用されるのか、県民に危険が及ばないか、厳しく見ていく必要があります。

  • 内野匡

    高松放送局記者

    内野匡

    平成31年入局。香川県政などを取材。

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